この機能アップデートは、現在、CN(中国)、JP(日本)、オーストラリア(AU)のデータセンターの組織に対し適用されています。他のデータセンターの組織に対しては今後適用予定です。(2024年9月9日現在)
ポータルは、顧客が直接Zoho CRMの関連データにアクセスし、管理できるセルフサービスのひとつです。これにより、顧客はCRMユーザーのビジネスに対する透明性を実感することができます。
現在のポータルの設定では、ルックアップ項目を介して関連する顧客自身の主要データと関連データのみを提供しています。以下は、現在のポータル設定を表したものです。
顧客が自分のデータにのみアクセスできることは、自分の情報に対する権限を与えることになりますが、それには以下のような課題があります。
課題1:制御の欠如
各データには2種類のプロセスがあります。1つは、コンバージョン、交渉、商談の獲得など、顧客の状況によって進められるプロセスで、もう1つは、承認、議論、拒否などの内部プロセスです。前者が顧客に取引の進捗状況を知らせるのに対し、後者はビジネス内部の決定や裁量を明らかにします。管理情報は制限されているはずですが、ポータルの現在の設定では、すべての段階で無条件にデータが公開される。これは、共有される情報の種類を制御できないという問題を引き起こします。
上記シナリオの例を挙げてみます。パトリシアは、自分のプロフィール、商談、見積書にアクセスできる顧客です。彼女は自身でデータを管理し、データの進捗を追跡することができます。自分のデータにアクセスできることは、彼女に自立感を与えるかもしれませんが、まだ確定していない値引きの承認や拒否を含む、プロセスの変更すべてを閲覧することは、不安を生むかもしれません。また、企業のプライバシー・ポリシーにも反します。
課題2:柔軟性の欠如
現在のポータルサイトでは、顧客の個人データと取引に関するデータしか共有できません。
しかし、顧客が自分以外の情報にアクセスしたい場合はどうするのでしょうか?あるいは、特定の特徴を持つデータを閲覧したいとしたらどうするのでしょうか?
例えば、あなたのビジネスがカナダ全土で複数の製品を販売しているとして、ポータルユーザーに特定の地域で販売されている製品のみを表示させたいとします。これには顧客の所在地に基づいた条件設定が必要となります。現在のポータルの設定では、この条件設定が制限され、顧客に上記の詳細を確認することができません。
このように、管理者が公開された情報を制御し、同時にポータルユーザーに柔軟性と独立性を提供するために、今回、ポータルのデータ共有機能:条件に基づくデータ公開機能を追加しました。
条件に基づくデータ公開機能の導入
条件に基づくデータ公開は、条件に基づいてタブとデータを公開する機能です。これらの条件は、どのデータをいつ公開するかを制御するために使用されたり、各ポータルユーザーに合った結果を提供するために使用されたりします。
技術的に言えば、ルックアップ項目を使用して親タブと関連タブを関連付けすることに加えて、管理者はタブの特定の条件を持つ他のデータを公開するために2種類の条件を定義できるようになりました。
その2種類の条件とは、「値と一致」と「項目と一致」です。
「値と一致」
この条件は、項目、演算子、任意の項目値を定義することで、データの適格性を判断できます。
例 :
「商談の種類 次の値と等しい 新規事業」と定義した場合、新規事業の商談は、すべてポータルユーザーに表示されます。
「項目と一致」
関連タブと親タブ間の関係は、それらの項目を関連付けすることによって確立されます。つまり、親タブと関連タブのデータの関係は、同じ値を持つ項目によって確立されます。
例:
「代理店のサービス提供地域 次の値と等しい 顧客の請求先の都市」
続いて、前述した2つの課題の解決法を通して、各条件を理解していきましょう。
「課題1:制御の欠如」の解決法
「値と一致」条件を設定することより、パトリシアは見積書が承認された段階になってから、見積書を見ることができるようになります。こうすることで、ビジネス上のやり取りは社内にとどまり、パトリシアは自身にとって不要な情報を見ることなく、見積もりを追跡することができます。
以下はその設定方法です。
- パトリシアはあなたの顧客で、彼女の取引情報を表示する必要があります。上記を実現するために、連絡先と見積書タブ間の相互ルックアップ項目 「連絡先名」を使用できます。
- データの表示を制御するには、「値と一致」条件:「[見積書のステージ] 次の値と等しい [承認済み]」を使用して、データ共有を管理できます。
こうすることで、彼女の見積書は承認済みステージに達した時のみ公開されます。
「課題2:柔軟性の欠如」の解決法
「項目と一致」条件で、ポータルユーザーは、カナダで利用可能なすべての製品を表示することができます。
- 商品タブは公開タブです。そのタブとの関係に関係なく、すべてのポータルユーザーがアクセスできます。
- 「項目と一致」条件:「(商品データの)[提供地域] 次の値と等しい (連絡先データの)[国(請求先)]」を設定して条件を追加することができます。
条件を設定することに加えて、これらの条件に かつ/またはの条件パターンを設定することもできます。つまり、関連付けのルックアップ項目の条件と「値と一致」 「項目と一致」条件の両方を使うこともできますし、3つ(関連付けのルックアップ項目の条件、「値と一致」 「項目と一致」条件)のうちいずれかのみを使うこともできます。
例えば、実装エージェントタブが、様々な場所でサーバを実装する専門エージェントの網羅的なリストを持っているとします。ユーザーが雇ったエージェントを表示したり、参考として他のエージェントを表示したりするには、以下のように条件を設定します。
- 親タブと関連タブは、ユーザが直接雇用したエージェントのデータを表示するために、関連付けのルックアップ項目を使用して関連付けすることができます。
- 特定の場所に属するエージェントを表示するには、「値と一致」 「項目と一致」条件を使用します。
「値と一致する」条件を使用する場合、ミシガン、オハイオ、シカゴ、ワシントン、インディアナポリスに属するすべてのエージェントを表示できます。
「項目と一致」条件を使用する場合、エージェントのサービス提供地域が連絡先の請求先の都市と同じであるすべてのエージェントを表示できます。
このようにして、ユーザーに直接雇われたエージェントと、希望する場所に属するエージェントの両方が、ポータルユーザーの参考のために表示されるようになります。
これらの新しい条件の導入により、設定ページのUIも更新しました。以前の「データ表示基準」列が、「関連付けと条件」と名前が変更されました。
この機能アップデートの範囲と影響を理解するために、さらにいくつかの例を見てみます。
例1:「値と一致」条件
大企業向けに電子機器やアクセサリーを大量に販売しているとします。大企業顧客向けにポータルの以下のタブ設定を追加しました。
- 親タブ: 連絡先
- 関連タブ: 商品、請求書、問い合わせ、予約
- 公開タブ: チャネルパートナー
ここでは、顧客が大企業顧客に適用されるすべての商品を確認できるよう、関連付けのルックアップ項目の条件と、「値と一致」 条件(=[顧客の種類] 次の値と等しい [大企業])を設定しました。
この設定により、顧客は自身の連絡先データ、(関連付けのルックアップ項目条件の設定により)自身の商品、( 「値と一致」 条件の設定により)大企業顧客向けの商品、さらにその顧客に関連する請求書、問い合わせ、予約、すべてのチャネルパートナーのデータを確認することができます。
例2:「項目と一致」条件
サンローラン病院は、アイオワ州にある複数の専門病院です。この病院では、専用のポータルサイトを使って、患者が自分の情報を管理、処方箋を確認、薬局に薬を注文、検査結果を確認、そして医師に予約を入れたりできるようになっています。
以下が、ポータルの設定です。
- 親タブ: 患者情報
- 関連タブ: 処方タブ、検査結果タブ、および予約タブは、関連付けのルックアップ項目を介して親タブと関連付けられ、「項目と一致」条件を介して医師タブと関連付けされます。
- 公開タブ: 医薬品
個人データ(処方、検査結果、予約)を持つデータは、ルックアップ項目を使用して患者情報に直接関連付けされ、医師を患者の病気に関連付けるために、患者情報内の「愁訴」項目は、その病気と同じ専門である医師に関連付けされます。つまり、患者は自分の愁訴が専門に一致するすべての医師を見ることができます。
例)[専門] 次の値を含む [IBS(過敏性腸症候群)]、[IBS専門医] 次の値を含む [IBS]